&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第36回)
「広告に頼らずにブランドの認知度を上げるには?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第36回目のテーマは、
「広告に頼らずにブランドの認知度を上げるには?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.広告と広報(PR)の違いとは?

せっかく良品質な商品を作っても、それがターゲット顧客の元に届かなければ、残念ながら意味がありません。
そのため、「良品質な商品がここにありますよ」と情報を発信して、まずはターゲット顧客に認知してもらわなければなりません。
ブランディング活動を効果的に行えば、認知→理解→納得→共感→応援というように顧客の頭の中のブランドイメージが階段を上るように発展していきます。

情報発信によってブランド価値を社外の人々に浸透させていく活動のことを「アウターブランディング」と呼んでいます。
アウターブランディングのための代表的な情報発信手段としては、広告と広報(PR)があります。

広告の代表的なものとしては、テレビ、新聞、ウェブなどでの宣伝広告(CM)があります。
自社が発信したい情報をテレビや新聞、ウェブなどのメディアにお金を払って宣伝広告として掲載・発信してもらうものです。
また、展示会などのイベントやポップアップショップでの販促キャンペーンなども広告になります。

他方、広報(PR)は、顧客や株主、債権者などのステークホルダー、投資家、報道機関などとコミュニケーションを図り、自社の理念や目的、活動などに対して認知・理解・協力を得られるように、良好な関係性を築いていく活動です。
代表的なものとしては、社会に発信したい内容をプレスリリースとして配信することでメディアに紹介し、番組や記事として取り上げてもらう活動があります。

アウターブランディングに取り組む企業にとって、広告と広報(PR)の2つの手段はそれぞれに一長一短があります。
その目的や機能に応じて、広告と広報(PR)を上手く使い分けるための全体設計をしていく必要があります。

今回は、「広告に頼らずにブランドの認知度を上げるには?」がテーマですので、広報(PR)に注目してご説明します。

現代はSNSが普及した情報化社会です。
特に、生まれながらにデジタル環境に囲まれて育ってきているZ世代やα世代と言われる若者たちは、情報の取捨選択能力に長けているといえます。
そのため、スマホなどで広告を見ると「どうせ広告だから、自社に都合が良いことしか伝えていないんでしょ。」「胡散臭い。」「お金をたくさん払えば、中身のないものも広告の力でよく見せることができるんでしょ。」などと、懐疑的に見る向きが増えてきています。
広告のメリットは、お金を払えば、記事の内容やスペースを発注主である自社がある程度自由に決められることです。
しかし、この広告主側のメリットが消費者から見ればデメリットに見えてしまいます。
昭和から平成の初期にかけては、広告をバンバン売って認知度を上げれば、商品が売れた時代もありましたが、それはもう遠い昔のようです。
情報の受け手は、溢れる情報の中で信頼度が高い情報を探し求め、偽情報や根拠が不確かな主観的な情報については懐疑的な姿勢を持つようになってきているのです。

そこで、アウターブランディングの手段として注目されているのが広報(PR)です。
プレスリリースを配信して、メディアに記事として自社のブランドを取り上げてもらうことにより、認知度を上げられる(可能性がある)のが最大のメリットと言えるでしょう。
また、広告は、発注側企業の自画自賛的なニュアンスがどうしても拭えません。
しかし、広報(PR)は第三者性があるメディアが発信する情報であるため、信頼度が比較的高いこともメリットになります。
信頼度が高いのは大きな宣伝効果になるからです。
ただし、デメリットとしては、ブランド側が発信したい内容をメディアが必ず記事として取り上げてくれるわけではないことです。
後ほど詳しくご説明しますが、メディアにはメディアの立場があるからです。

そこで、自社ブランドをメディアに記事として取り上げてもらうためには、記者に「記事にしたい!」と思ってもらえるようなプレスリリースの発信が大切です。

「プレスリリース」とは、メディアに向けて提供する情報や告知、発表のことをいいます。

記者に記事にしたいと思ってもらえるようなプレスリリースとは、社会的な興味・関心を引く内容であって、情報開示の姿勢に対する信頼感があり、さらに、具体的かつ端的に表現されていて(ニュースバリューが明確)、分かりやすい情報です。

なお、プレスリリースは会社が社外に発信する公式文書の扱いになりますので、主観的ではなく、客観的な視点で書かれていることが前提条件になります。
この点も、広告との大きな違いと言えるでしょう。

_2.効果的なプレスリリースの書き方とは?

メディアに自社のブランドを取り上げてもらえるようなプレスリリースにするにはどのように書いたら良いのでしょうか?
ポイントは、興味を持ってもらえる内容にすることと、メディアの記者の立場を考えた内容であることです。

まず、興味を持ってもらうためには、興味の引き金となるフックを作る必要があります。
そこで、インパクトがあって、目を引くような見栄えが良いビジュアル素材を活用するようにしましょう。
写真や商品サンプルなどですね。

次に、記者の立場を考えた内容とは、ブランド側の自分勝手な主張ではなく、記者がその内容に社会性があると判断し、記事に取り上げたいと思うような話題(=メディアフック)を提供することです。
そもそも、記者は新規性や社会性、トレンド性がある情報を発信することを目的に取材活動をしています。
そのため、それらの要件を備えた内容をプレスリリースで提供すれば、記事に取り上げようと思ってもらいやすくなります。

それでは、プレスリリースの基本的な構成要素とそれぞれの効果的な書き方について、具体的に見ていきましょう。

まずはタイトルです。
記者にとって一番最初に目に留まるものですので、超重要です。
最初に興味を持ってもらえなければ読まれることはないでしょう。
記者も日々配信される多くの情報の中から興味を引くプレスリリースを探していますので、タイトルで注目できなければ、それ以上に中身を読もうとは思ってもらえないからです。

ポイントは、伝えたい内容を短く表現できているキーワードをタイトルの中に盛り込み(最大でも3つ)、かつ、30文字以内の短文で書くことです。
また、「!」や「!?」など、その他過度な強調表現や修飾語などは使わずに、具体的な数値などをタイトルに入れておくと効果的でしょう。
主観ではなく、客観性が担保されていそうな印象をもってもらいやすくなるからです。

次にリード文です。
プレスリリース全体の内容の要約とでも言うべき、短い文章になります。
リード文の役割は、タイトルで引いた興味を持続させて本文につなげることです。
ポイントは、本文を読んでもらえるように、素早く読めて、内容を把握しやすい文章にすることです。
特に、5 W1 H (あるいは5W2H)を明記しておくことです。
➀Who:誰が(自社)
➁What:何を(発表内容)
➂Where:どこで・どこに(実施/販売する場所)
➃When:いつ(開始日や実施期間)
⑤Why:なぜ・どうして(背景や目的)
➅How:どのような・どのように(特徴など)
➆How much:いくら(金額)

3つ目は本文です。
一番伝えたい情報を過不足なく盛り込んだ内容の文章です。
ただし、ごちゃごちゃあれもこれもと余計な情報まで書き込まないようにすることが大切です。
伝えたいポイントをしっかり整理して、届けたい相手に対してきちんと届くように書きましょう。

そのために、事前に構成(=文章の組み立て)をしっかり練って、十分な情報量と読みやすさが両立するような書き方をする必要があります。

まず、十分な情報量については、数字やグラフ及び公的機関が発表している各種の統計情報など、最新のデータや根拠を正確に明示するようにしましょう。
そうすることで、内容に専門性や客観性を持たせることができ、記者から信頼してもらいやすくなります。
次に、読みやすさの点については、太字や下線などの装飾を使ったり、小見出しを設けたり、箇条書きを活用するなど、ビジュアル面に配慮したものにすると良いでしょう。
図解や表、グラフなどを活用するのもお勧めです。

また、本文に書ききれないような詳しい内容を伝えたい場合には、別紙として参考資料をPDFなどでつけておくと良いでしょう。
逆に、メインテーマに関連性の低いものは削除するか、最後の方に少しだけ載せるようにします。
これも本文を読みやすくするための工夫です。

なお、開発者のコメントなどの裏話などにも触れて内容にストーリー性を持たせておくと、記者の関心を引いて特集企画(=記者自身による企画・取材による記事)につながることもあります。

4番目の基本構成要素は画像です。
最低3~5枚の画像をプレスリリースに掲載するようにしましょう。
その方がビジュアル的に世界観が伝わりやすくなり、読み手に親切だからです。

また、トップ画像は、記事として配信される場合のアイキャッチ画像(=一番目立つところに表示される画像)として使われる可能性が高いので、念入りに選んだものを載せるようにしましょう。
ビジュアルで世界観とメッセージをうまく主張できれば、記者に取り上げてもらいやすいプレスリリースに近づきます。
なお、画像はメディアが使いやすいサイズや解像度にしておきましょう。

基本構成要素の5番目は連絡先の記載です。
メディアやユーザーがプレスリリースを見て問い合わせをしたくなった場合に、担当者の連絡先が書かれていないとアクセスするのに不便です。
そのため、本文の後には、社名や住所、電話番号、メールアドレス、担当者名、営業時間などを記載しておくようにしましょう。

_3.広報(PR)活動における注意点とは?

メディアにうまく取り上げてもらえれば、とても効果が高いアウターブランディング活動になります。
しかし、注意点もありますので、最後にご説明しておきたいと思います。

まず、プレスリリースを配信してもメディアに必ず取材してもらえるわけではなく、取材してもらえた場合であっても必ず記事にしてもらえるわけではないということです。
お金を払って記事にしてもらう広告とは違い、メディアは社会性の観点から記事としての価値があるかどうかを見て掲載するか否かの判断をするからです。
つまり、メディアはメディアの立場からニュースバリューの有無を判断しているわけです。

また、記事にしてもらえたとしても、記事の内容やスペース、掲載位置に注文をつけることはできないということも注意が必要です。
これも、メディアの側がそのニュースの価値を判断して決めることだからです。

さらに、プレスリリースや記者発表といったメディア向けの発信内容は、あくまで企業やブランド側の主観ではなく、客観的であるものが尊重されます。
ここも広告との大きな違いと言えるでしょう。
メディアは情報を精査して、社会に発信する意義のあるものを発信していく使命を持った機関ですので、客観性のないものを記事にすることはまずありません。
企業やブランドの側の主観に満ち溢れた発信内容は、広告では扱ってもらえても、社会性のある記事としては取り上げてもらえないでしょう。

最後に、広報(PR)担当者は、社内の人たちに対して広告と広報(PR)の違いをよく説明して理解や協力を求めていくべきです。
そして、社内の人々と社外の記者との架け橋になれるように、調整能力を磨く必要があることにも注意しましょう。
中には、「取材を受けたのに記事にされない!」「記事にされてはいるが扱いが小さい!」と不満に思う経営者さんもいらっしゃいます。
必ずしも記事にしてもらえるわけではない、原則として記事内容に注文をつけられないなどといったメディアとの関係性を理解してもらえるように、社内の人々によく説明しましょう。

その上で「どうやったらメディアに取り上げられるような社会的意義のある発信をすることができるのか?」を全社員を巻き込みながら考えていきましょう。

さらに、メディアの記者たちとの良好な関係づくりをしていくようにしましょう(メディアリレーションズ)。
互いの誠実で忌憚のない情報交換が、社会にとってもその企業にとっても意義のある記事の作成・発信につながるからです。
また、メディアの側の本音を記者から聞いておくことで、質の高い広報活動ができるようにもなります。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第37回)では、「共創時代の新たなブランドコミュニケーションとは?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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