&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第37回)
「共創時代の新たなブランドコミュニケーションとは?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第37回目のテーマは、
「共創時代の新たなブランドコミュニケーションとは?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.従来の一方通行のものから双方向・多方向のブランドコミュニケーションへ

高度経済成長時代は市場に商品が十分に行き渡っていなかったため、広告やセールスプロモーションなどによる企業からの一方通行の情報発信であっても、商品が売れていきました。
つまり、一方通行的な情報発信スタイルであっても、商品価値を訴求すれば売れた時代だったのです。

その情報発信のゴールは、企業側の「知って欲しい」「買って欲しい」という売り手目線を反映して、ターゲット顧客が自社ブランドを購入してくれたら終わりとなるものでした。

次に、商品価値だけでなく、実際に商品を利用・活用する体験を提供するといった、体験価値も訴求しなければならない時代を経ます。

さらに、インターネットの普及により、ネット上で盛んに情報のやりとりが行われる時代になりました。
また、SNS時代になったことで、それまでは情報の受け手であった消費者が自ら情報を発信できる送り手に変わりました。
そのため、現代の情報化社会においては、売り手である企業からの情報発信、特にブランドについての情報の発信がより重要になってきています。
それのみならず、ブランドについての情報のやりとりがネット上での口コミやSNSの拡散などによって行われるようになっているため、企業は情報の受け手でもあります。
いわば、双方向・多方向のコミュニケーションがなされる時代になったと言えるでしょう。

このように、SNSが普及して消費者が売り手側の企業や他の消費者と情報をやり取りできる現代では、企業と消費者とが共にブランド価値を創っていく「共創の時代」を迎えているといえます。
つまり、かつてのような売り手側からの一方通行の情報発信はもはや時代遅れになっているのです。

特にブランドに関してやりとりされる情報量について見ても、現代は爆発的に増加してきており、それに合わせて消費者の購買行動が劇的に変化しています。
したがって、売り手である企業の側もこの変化をよく理解し、それに合わせて新たなブランドコミュニケーションを創り上げていくべきです。

ブランディングの目的は、他者と差別化された独自性ある価値を提供することにより、ブランドを永く愛し続けてくれるファンを創り出すことです。
そして、そのファンが新たなファンを呼び込んできてくれるような循環を創り出すことです。

そのため、共創時代の新たなブランドコミュニケーションに求められるのは、ブランドの購入者自身が周囲の人にお勧めしたくなるようなコミュニケーションの在り方とは何かを模索し、新たに構築していくことでしょう。

_2.新旧の購買行動決定プロセス-AIDMAからコトラーの5A理論へ-

適切なブランドコミュニケーションを新たに構築するためには、消費者の購買行動の劇的な変化をよく理解する必要があると、前述しました。

それでは、消費者の購買行動のプロセスはどのように変化してきたのでしょうか。

従来は『AIDMA理論』と言って、セールスパーソンによる販売プロセスを念頭に開発されたモデルによって説明されていました。
これは、認知(Attention) →興味(Interest) →欲求(Desire) →記憶(Memory) →購買行動(Action)という流れで消費者の意思決定が行われると説明するものです。
それぞれの段階の頭文字をとってAIDMA理論と言われています。
認知から始まり、次の行動へ移る消費者の数がだんだん減っていくことから、漏斗の一番下の部分が購買行動にあたると説明されます。

このAIDMA理論では、顧客に購買行動を起こしてもらうことがゴールとされています。
従来の売り手側の企業による一方通行型のコミュニケーションでも通用していた時代には、消費者の購買行動を分かりやすく説明できるものとして重宝されていました。

しかし、インターネットの普及によって個人が発信できる時代を迎えますと、消費者は「失敗したくない」という心理から、購入前にネットで商品の情報を探索して、その良否をよく調べるようになりました。
また、自分の購買行動をネットを通じて他者に共有することもあります。
さらには、購買する前の段階でさえも、良いと思った商品をSNSなどで拡散する人もいます。

このように、インターネット時代になってからは探索と共有という2つの購買行動が新たに見られるようになったため、従来のAIDMA理論では説明しきれなくなりました。

そのため、『AISAS』という新しい理論が登場してきたのです。
これはAIDMA理論の欲求(Desire) を探索(Search)に、記憶(Memory)を購買行動(Action)に、購買行動(Action)を共有(Share)に変えたものです。

さらに、経済学者のフィリップ・コトラー教授は、スマートフォン時代を迎えた現代のカスタマージャーニー(=顧客体験)をより良く説明するために『5A理論』を提唱しています。
これは、新しい時代の購買行動の意思決定プロセスをより的確に説明した理論として注目されています。
ちなみに、認知(Aware)、訴求(Appeal)、調査(Ask)、購買行動(Action)、推奨(Advocate)のそれぞれの頭文字である5つのAをとって、『5A理論』と名付けられています。

5A理論では最後に推奨(Advocate)が来ていることから分かるように、購買行動の前後から誰かにお勧めしてもらうことがゴールに設定されています。
「お勧めしてもらう」とは、例えば、口コミをしたり、あるいは自己承認欲求を満たすために購買したものをSNS上に公開して拡散する、といったことなどです。

消費者の自己承認欲求まで考慮する必要が生まれてきましたので、ブランドによってはシンプルで主張しすぎないデザインに変更したものもあります。
「あくまで主役は購買者であり、ブランドは購買者の自己表現をサポートするための、邪魔しない存在であるように」との思いからです。
なお、5A理論はAIDMA理論とは異なり、漏斗の形状で説明されるものではないことに注意が必要です。
家族や友人などからの口コミやネットからの情報などで認知(Aware)した後に、実際に購買行動(Action)を経ることなく、いきなり推奨(Advocate)する消費者もいるからです。

以上のように、SNSが普及した現代では、ブランドに関する情報のやり取りが爆発的に増加しました。
そのため、売り手側である企業は一方通行ではなく、双方向・多方向のブランドコミュニケーションを適切に行う必要が生じてきたといえます。
このような変化に合わせて、売り手側の企業はブランドコミュニケーションを柔軟に進化させていくべきでしょう。
それが顧客やステークホルダーと永く良好な関係性を構築していくポイントになります。

_3.コミュニケーション・ミックスからIMCへ

それでは、消費者が購買の前後から周囲の人にお勧めしたくなるようなブランドコミュニケーションを行うにはどのようにしたら良いのでしょうか?

かつては主にマス(=大衆)を対象に、ターゲット顧客の最大公約数に注目したコミュニケーションの在り方が主流でした。
しかし、発信媒体ごとにメッセージや世界観がバラバラになってしまうこともありました。
その結果、効果的な訴求が出来ずに、多額の予算をかけた割にはブランドイメージを上手く形成できませんでした。
そこで、より良いコミュニケーション効果を生むことを志向して「コミュニケーション・ミックス」が行われるようになりました。
これは、広告や人的販売、パッケージデザイン、PRなどの各コミュニケーション要素をミックスさせてブランドコミュニケーションを行うものです。
例えば、テレビCMと店頭のPOPを連動させて統一感のあるメッセージを発信するといったことが挙げられます。
また、パッケージデザインと折り込みチラシのデザインを連動させることもそうです。
各コミュニケーション媒体を上手に組み合わせることで、相互に有機的に連動させながら展開し、シナジー効果(=相乗効果)を発揮することができます。
これにより、広告部門や営業部門、製品開発部門、広報部門などの各部門でバラバラに行われていたブランドコミュニケーションをある程度うまく組み合わせてできるようになりました。

ただ、時代が進み、SNSなどによる情報のやりとりが爆発的に増加した現代では、コミュニケーション・ミックスでも上手くいかないことが増えてきました。

その背景の1つとして、データベースを活用できるようになったことで、個人により一層注目したコミュニケーションが可能になったことが挙げられます。
このような状況では、コミュニケーション要素間のより一層の連動を図ることが大切になってきており、媒体ごとの長所を活用し、短所をうまく補完できるようなやり方(=クロスメディア)が取られるようになってきています。
具体的には、SNSでは15秒ほどのショート動画によって認知を獲得し、より詳しい情報は自社HPに掲載しているニュース記事を読んでもらえるように顧客を誘導するといったやり方です。
また、POSデータやスキャナーパネルデータなどによりコミュニケーション効果の精密な分析が可能になったことも大きいでしょう。
消費者の購買履歴データをリアルタイムで収集することができるからです。
また、世代別の購買情報も分かります。
これにより、広告とセールスプロモーションの間で相乗効果を上げることが可能になりました。

以上のような変化のために、コミュニケーション・ミックスを行うだけでは足りなくなってきたのです。

より統一感があって、より個人にフォーカスしたブランドコミュニケーションにするために、企業のあらゆるコミュニケーション対応を管理・調整する責任者を置く必要が増えてきたといえます。
つまり、ミックス(混合化)からインテグレーション(融合化・統合化)へとブランドコミュニケーションは進化してきています。

このような、全てのコミュニケーション媒体を統合化(融合化)して適切なコミュニケーション活動を図っていくことを『IMC (Integrated Marketing Communication)』と言います。

例えを使って説明しますと、従来の『コミュニケーション・ミックス』は、バラバラの色の紙を上手に組み合わせて調整し、全体としてきれいな図柄にするというものです。
バラバラの色の紙とは、広告部門が作る広告デザイン、営業部門が行う人的販売によるメッセージ、製品開発部門が作るパッケージデザイン、広報部門が行うPRの内容など、予算や目標、メッセージがそれぞれ異なっているものです。

これに対して、『IMC (Integrated Marketing Communication)』では、企業のあらゆるコミュニケーション対応を管理・調整する責任者を最初から設置して、新しい色の紙を作り出すようなものです。
これは、最初からコミュニケーションを統合するための仕組みがあって、その決められた方針のもとに様々なコミュニケーション媒体が一貫して連動していくスタイルになります。

これにより、セールスプロモーション(=景品や試供品の提供、各種キャンペーンの実施、陳列、商品説明パネルの制作・設置、アフターサービスの提供など)やイベントといった広告以外のコミュニケーション手段が相対的に重視されるようになってきた流れにも沿うことができます。
つまり、セールスプロモーションやイベントは従来のように広告との主従関係にあるものではなく、それらを広告と同一レベルのものと捉え直して、最も効果的なコミュニケーションを模索していくことが可能になるのです。

生まれながらにデジタル環境の中で育ち、情報リテラシーが高いZ世代やα世代は広告をスルーする傾向が高いと言われています。
そのため、自分の目や耳で体験できるセールスプロモーションやイベントが見直されつつあります。

したがって、従来は広告がメインでセールスプロモーションやイベントはサブという扱いが多かったのが、現代では状況に合わせて最も効果的なコミュニケーション媒体をメインに据えるようになっています。

以上見てきましたように、現代はSNSを通じて双方向・多方向のコミュニケーションが頻繁に行われる時代です。
そのため、売り手側の企業は、コミュニケーション活動を管理・調整するための司令塔役を設置して、そのもとで適切なブランドコミュニケーション活動を行うようにしましょう。

そうすることで、ターゲット顧客やステークホルダーとの間で統一感のあるブランドコミュニケーション活動を実現できるでしょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第38回)でも、引き続き、ブランディングの基礎的な知識・考え方をテーマに分かりやすくご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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