&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第35回)
「ブランドコミュニケーションをマネジメントする方法とは?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第35回目のテーマは、
「ブランドコミュニケーションをマネジメントする方法とは?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.ブランドコミュニケーション・マネジメントにおけるやりがちな失敗とは?

皆さんは、「ブランドコミュニケーション・マネジメント」という言葉をご存知でしょうか?

まず、「ブランドコミュニケーション」とは、売り手側の企業が提供する商品のブランド価値を顧客に正確に伝え、かつ、顧客からの反応をフィードバックとして捉えて、ブランド価値向上にさらに活かすための双方向のコミュニケーション活動のことです。
ブランドコミュニケーションを通じて、ターゲット顧客の頭の中に企業側が意図したブランドイメージが良好な形で形成されることを目的とします。

どれだけ高品質の商品を作って販売したとしても、そのブランド価値がターゲット顧客から共感はおろか、認知も理解もされないのでは、その商品のブランドイメージを思い浮かべてもらうことはできません。
つまり、顧客から愛されて永く選ばれ続けるブランドにはなれないのです。

そのため、商品のブランド価値を発信していく売り手側は、ターゲット顧客やその他のステークホルダーとの間で適切にブランドコミュニケーションを作り上げていく必要があります。
つまり、売り手側が意図したブランドイメージが良好な形で顧客の頭の中に形成されるように、ブランドコミュニケーションを適切に管理していくのです。
このことを「ブランドコミュニケーション・マネジメント」と呼んでいます。

ところが、少なくない企業がブランドコミュニケーションマネジメントにおける誤解や失敗をしてしまっています。

例えば、ブランド価値を社外に発信するツールには、チラシ広告や看板、展示会などのイベント、店舗の外観や内装、社員の制服や名刺、SNS、ホームページ、YouTube動画など様々なものがあります。
クリエイティブな部分については、多くの会社が社内で制作することが難しいため、各ツールごとに外部の制作会社に依頼して作ってもらうことになります。

ところが、依頼する際に適切なブランドコミュニケーション・マネジメントをせずに、広告代理店などの制作会社へ丸投げの状態で依頼してしまいますと、全体的な統一感がなくなり、失敗に終わってしまいがちです。

そうです、発注側が適切なブランドコミュニケーション・マネジメントをせずに制作会社に丸投げしてしまうことが失敗の大きな原因です。
これでは、どんなに腕の良い制作会社でも良い制作物を作るのは難しいでしょう。

では、なぜ適切なブランドコミュニケーション・マネジメントがなされなくなってしまうのでしょうか?

その原因の1つ目としては、発注側がブランドデザイナーなどのクリエイター職の人たちの考え方を理解していないことがあります(もちろん、クリエイター職の人たちも、発注側の人に自分たちの考え方を理解してもらうように日々努力しています。)。
クリエイター職の人たちはその道の専門家ですから、依頼を受けた制作物が発注主の顧客やステークホルダーに対して最も効果的に発注主の意図が伝わるように制作します。
そのため、発注側から適切なブランドコミュニケーション・マネジメントがなされないと、個別の制作物ごとに見ればとても良い仕上がりのものであっても、全体を見渡すと一貫性がないブランドというイメージを持たれてしまいます。
言い換えれば、個別の依頼ごとに違った特徴を強調するような制作物になってしまいがちなため、全体的な統一感がなく、全体最適からは程遠いものになってしまいかねません。

次に、2つ目の原因としては、広告さえ出せばイメージが伝わると発注側が誤解していることです。
そんなに簡単に顧客の頭の中にブランドのイメージは定着しません。
単発の広告だけではあまり効果がないことが多いです。
広告に限らず、やはり、点と点が結びついて線になり、やがて面になっていくような発信の全体設計が必要です。

さらに、3つ目の原因としては、発注側が商品を売るためにはインパクトが大事だと考え(確かに一理ありますが)、短期的なインパクト重視のコミュニケーション手段に陥りがちであることです。
そうなりますと、どんなに優れた専門家が制作して一時的に売れたとしても長続きはしませんし、ましてや永く愛され続けるブランドになることはできません。
なぜなら、短期的なインパクト重視の制作物は、その時々の状況に応じて制作物ごとに訴求の重点が異なってくるため、ブランド全体のイメージがぶれてしまう危険性が高くなるからです。
つまり、ちぐはぐ感が出て、ブランド全体の統一感ある世界観を形成することができず、いつまでたっても顧客の記憶に残らないブランドになってしまいます。

最後に、4つ目の原因としては、「プロに任せれば大丈夫!」という謎の安心感で、ふわっとした抽象的過ぎる内容で専門家に依頼してしまうことです。
例えば、発注側が「とにかく、何かいい感じにしてください!」というような、ブランドの理念や目的、その他の重要事項がきちんと言語化されていない状態で制作会社やデザイナーなどの専門家に依頼してしまうことです。
もちろん、専門家の側も何とか発注主の意図を理解しようとして、事前にしっかりインタビューをするのが普通ですが、それにも限界はあります。
フランス料理の有名なシェフといえども適切な材料の提供なしでは料理は作れません。
それと同じように、制作会社やデザイナーなどの専門家も発注主の意図がしっかり伝わるような言語化された依頼内容でないと、良い制作物は作れないのです。
また、依頼する内容の中にブランディング戦略の全体像もあわせて伝えておかないと、当然ながら、専門家は自分が担当する個別の依頼内容とその周辺しか考えることができず、全体最適な制作物を作ることができません。
その結果、ブランドが顧客やステークホルダーに伝えたい全体的なストーリーによるイメージ形成はできなくなってしまいます。
それを防ぐためには、発注の際にきちんと自分たちの理念や目的、発注意図などを言語化して、さらに専門家の側にしっかり自分たちをインタビューしてもらうように依頼することです。
また、十分な説明時間を取るようにもしましょう。
可能な限りコミュニケーションミスをなくすようにしていくのです。

_2.クリエイティブ・ブリーフ(仕様書)をしっかりと書いて説明する

コピーライターやグラフィックデザイナーなどの専門家に存分に力を発揮してもらって、全体最適な制作物を制作してもらうためには、発注側がするべきことがあります。
それは、発注側が専門家に対して要求する条件や内容を明確化してまとめた書類である「クリエイティブブリーフ(仕様書)」をしっかり書いて渡し、事前にきちんと説明することです。
このクリエイティブブリーフをしっかり作り込んで専門家に提示することによって、発注側の担当者や専門家が変わったとしても、同じ世界観を維持することができます。
依頼内容が一貫して同じものになるからです。

前回までの記事で、ブランドの目指す姿やブランドらしさを守り抜くためのツールとして「ブランドガイドライン」を作り、さらに、社員教育用の便利なツールとして、ブランドガイドラインを要約した「ブランドブック」を作りましたね(第33回34回の記事を参照)。
それらを元に、発注目的や内容に合わせて加工したものを「クリエイティブブリーフ(仕様書)」として作ると良いでしょう。
クリエイティブブリーフを作り込んでおくことで、統一感のある世界観を守るための依頼内容の同一性が担保されるようになり、しっかりとブランドらしさを管理していくことができるようになるのです。

ブランドらしさを守るために大切なのは、あらゆるコミュニケーションチャネルで発信する各表現について、統一された世界観を維持するようにコントロールしていくことです。
広告や宣伝などで使われる制作物に限らず、全てのタッチポイントで一環した世界観を表現することを意識して、専門家にその都度しっかり説明するようにしましょう。
クリエイティブブリーフがなければ、発注側の担当者が変わったり、専門家が変わったりするたびに各制作物が独創的になりすぎて、一貫性が崩れてしまいかねません。
そのため、強いブランド価値を作り上げるために、クリエイティブブリーフをしっかり作り込むことで、適切なブランドコミュニケーション・マネジメントを行うようにするのです。

クリエイティブブリーフを1回作り込んでしまえば、その後、市場環境や企業の成長段階に応じて少しの修正はあるものの、新たに別の専門家に依頼する時も使い回しができて便利です。

なお、複数の専門家たちとチームを組んでブランド表現を制作していく場合に、各専門家の動き全体をコントロールすべきなのは発注側です。
各専門家が動きやすいように、かつ、全体としてブランドの統一感を維持できるように適切にマネジメントしていくようにしましょう。

それではクリエイティブブリーフ(仕様書)の内容はどのように書けば良いのでしょうか。
前述したように、ブランドガイドラインとブランドブックを元にして内容を一貫させるようにしましょう。
つまり、それらと仕様書の内容をしっかりと連動させて、統一感を保つのです。

具体的には、

・ブランドの目指す姿である最終的な目標(ゴール)は何か
・届けたいブランド価値は何か
・ターゲットとする理想の顧客像(ペルソナ)はどのような人物か
・ブランドのタッチポイント(顧客接点)はどこにあるのか
・当面のマーケティング戦略(商品、価格、流通経路、広告PR及び販売促進)はどう考えているか

などを書き込みましょう。

また、ロゴやキャラクターの使い方、店舗や社員の写真の使い方、ブランドカラーの使用条件などといったデザイン的なルールもしっかり定めて、専門家に示すようにしましょう。

さらには、言語的なブランド要素としてのトーン&マナーや、トーン・オブ・ボイス、キーメッセージ、及び、ブランドパーソナリティーのイメージなどについても、クリエイティブブリーフの内容に書き込みましょう。

まとめますと、今回の発注による制作物によって、ブランドとしてどんなメッセージをターゲット顧客に伝えたいのかについての全体像を明確にした上で、それを専門家に正確に伝えるようにしましょう。
その方が、専門家もプロとして力を発揮しやすくなるからです。

_3.クリエイティブブリーフ(仕様書)の定め方の大切なポイントとは?

クリエイティブブリーフの内容が簡潔過ぎて粗雑なものですと、発注側の意図がデザイナーや制作会社などの専門家へ正確に伝わらずに誤解や混乱を生じさせてしまいます。
その結果、良い制作物を作ることはできません。

他方で、クリエイティブブリーフの内容を細かく定め過ぎますと、専門家はクリエイターとしての創意工夫の余地がなくなってしまいます。

そこで、クリエイティブブリーフを書くときには、粗雑すぎず、細かすぎず、バランスのとれた内容の定め方をするようにしましょう。
そうすれば、専門家が発注側の意図を正確に実現するべく、その腕を存分に振るうことができます。

バランス感のあるクリエイティブブリーフを作り込むことで制作物全体を上手くコントロールするのも、ブランディング担当者の腕の見せ所なのです。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第36回)では、「広告に頼らずにブランドの認知度を上げるには?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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