&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第34回)
「社員にブランドの理念や価値を体現してもらうには?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第34回目のテーマは、
「社員にブランドの理念や価値を体現してもらうには?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.ブランドの理念や価値を社員に浸透させるためのツールとは?

企業ブランドでも、事業ブランドでも、あるいは商品ブランドでも、そのブランド価値をターゲット顧客やステークホルダーに伝えていくのは、社長・経営陣及び全社員ですね。
他に代わりに伝えてくれる人はいませんので、社内の人々が一丸となって社外の人々にブランド価値を正しく伝えていく必要があります。
ところが、事業が拡大してきて社員の数が多くなったり、事業部ごとに分かれたり、親会社と子会社などができたりしますと、全社員がブランド価値を体現するのはなかなか難しくなってきます。
そうなってしまっては、会社としての一体感も薄れがちになるため、全社員が一丸となってブランド価値を社外に伝えていくことはできません。
そこで、ブランド価値の社内への浸透活動である「インナーブランディング」をしっかり進めていく必要が出てきます(もっと言えば、事業が拡大する前からインナーブランディングをしっかりやっておく必要はあります)。

このインナーブランディングを効果的に進めるためのツールとして、「ブランドブック」を制作するようにしましょう。

前回(第33回)の記事で「ブランドガイドライン」についてご説明しました。
タッチポイント(=顧客接点)ごとにちぐはぐなメッセージと見た目になってしまわないように、ブランドらしさを守り抜くための詳細なルールブックのことでした。
言わば、ブランドガイドラインがあることで、統一感あるブランドの世界観を守れるのでしたね。

しかし、インナーブランディングの観点からは、ブランドガイドラインには弱点があります。
それは、ブランドの成長とともに内容が高度化・複雑化していくため、必然的に分厚いものになり、読み手としては読む気がしなくなってしまうのです。
また、分厚いだけに、専門の部署に所属して使い慣れている人でないと、知りたいことを探しにくいということもあります。
これでは、社員全員にブランドらしさを正しく理解してもらうのは難しいでしょう。

そこで、社員の誰もがぱっと読めて分かりやすいツールを用意することで、心理的ハードルを下げ、インナーブランディングを効果的に進めるようにしましょう。
具体的には、ブランドガイドラインの中に書かれたルールの中でも特に重要な内容だけをまとめて分かりやすく冊子にしたものとして「ブランドブック」を作りましょう。
ブランドブックは、言わば、ブランドガイドラインのエッセンス集みたいなものになります。

このブランドブックはブランドガイドラインのサポートツールという位置づけですが、実際の社内研修では、その使いやすさから、こちらの方をメインに使うことが多くなると思います。
そのため、短い言葉で、かつ、ビジュアル的にも分かりやすく記載する必要があります。
ブランドブックの制作・活用により、全社員のブランド価値やブランド表現に対する理解を高めることができます。
また、中途入社の社員でも、周りの社員とブランドの理念や価値に対する認識を揃えやすくなります。
社員間での認識のズレがなくなれば、顧客へ伝わるブランドのイメージもブレなくなっていきます。

以上のような効果を見込めるためには、ブランドブックを作る際のポイントがあります。
どんなに丁寧に時間をかけて作っても、読んでもらえなければ始まりません。
ブランドガイドラインの制作もそうですが、ブランドブックは理解を促進するための工夫がより一層なされている必要があります。
そのため、ビジュアル化とITの活用をするようにしましょう。

まず、ビジュアル化、つまり、目で見てすぐに理解できるようにするための工夫としては、簡潔で平易な文章や図解、チャートなどを駆使するようにしましょう。
こうすることで、全体像や複雑な構造を理解・把握しやすくなります。
イメ―ジや親近感を持ってもらいやすくするために、手書きイラストや漫画などを活用するのも大いにありでしょう。
また、事業所や社員個人の写真を掲載するようにすると、親しみが湧いて感情移入しやすいのでお勧めです。

なお、ブランドブックの内容としては、ブランドを守るための基本ルールの説明と、失敗例、迷った時の行動の優先順位などについて分かりやすく記載するようにしましょう。

次に、ITの活用に関しては、ブランドブックの内容を画像や動画で一目瞭然で理解できた方が早いので、スマホやiPadで見られるようにしておくのが効果的です。
また、クイズ形式やゲーム方式などを取り入れて、e-learningや社員間のオンライン・コミニケーションツールとして活用するのも良いでしょう。

_2.インナーブランディングを効果的に進めるための手法とは?

インナーブランディングを効果的に進めるためのツールとして、ブランドブックができました。
しかし、ブランドブックを作っただけでは、仏作って魂入れずと同じ状態になってしまいます。
このツールをしっかり活用して社員にブランドの理念や価値を浸透させていかねばなりません。
そこで、社員研修を実施するようにしましょう。

インナーブランディングの一環としての社員研修の具体的な手法としては、

・ワークショップやセミナー、オンライントレーニングなどを開催する
・ブランドブックや社内報を制作して配り、それを教材に輪読会や発表会などを行う
・ブランドを代表するような社員をブランドアンバサダーとして表彰する

などといった施策が挙げられます。

例えば、Microsoft社では本社で毎年ストーリーテリングサミットを開催し、社員の一人一人が社外の人々に自社のブランドストーリーを語れるようになるための育成プログラムを実施しています。
社員は誰でも参加自由だそうです。

社員研修を通して、ブランドの理念や価値を全社員に浸透させ、社員一丸となってブランド価値の最大化を実現していけるように、社員を育成していくのです。

米国の著名な作家であり、セールスマンでもあるジグ・ジグラーは、「社員をトレーニングした結果社員がやめていってしまうことよりも一層ダメなことは、トレーニングを受けさせずに社員を放置することだよ。」と述べています。

社員研修の目的は、一人一人がブランドの理念や価値をよく理解して、実践・体現できるように育成することです。

ただ、ここで乗り越えておくべき課題がいくつかあります。
つまり、社員の心理的な抵抗感からくるいくつかの乗り越えるべき課題です。

まず、インナーブランディングのための研修の目的が社員にとって不明確であり、具体的にどこを目指して行動すればいいのかが分からなくなってしまうことです。
そのため、まず最初に、目標であるブランドが目指す姿(=理想像)の共有を図るようにしましょう。

次に、ブランド価値向上のためにやる気がある社員であっても、いざ顧客やステークホルダーに説明するために必要な情報が不足していては、ブランド価値を伝えることができません。
何より、自分自身がブランドの理念や価値を振り返りたくなった時に参照できるものがないと困ります。
そこで、ブランドガイドラインやブランドブック、ブランドストーリーを書いたカード、社内報など、全社員が必要な情報へ容易にアクセスできる体制を組んでおきましょう。
誰もがアクセスできるところに情報ブースを設けておくことで、社員それぞれがブランドメッセージをバラバラに理解して顧客を混乱させるようなこともなくなります。

最後に、全社員が一丸となってブランド価値を高めていくと言いましても、上からの押し付けではなかなかやる気が出るものではありません。
そこで、ブランド価値向上に貢献した社員を高く評価する制度が必要になります。
例えば、社員全員でTwitterを頑張って自社に対する社会の認知度を上げていくという目標を立てた場合、1番いいねをもらった、1番リツイートされたなどの分かりやすい指標を設けてみるのもお勧めです。
そして、決められた期間内に1番成果をあげた社員を表彰するのです。
ブランド価値向上につながるような分かりやすい指標を設けて評価し、報酬(必ずしも金銭だけでなく名誉でもよい)を報いるような制度を設けると良いでしょう。

_3.ブランドストーリーを自分事化してもらうのがポイント

社員にブランドの理念や価値を実践・体現してもらうためには、ターゲット顧客やステークホルダーたちに伝えたいブランドストーリーを自分事化してもらうように研修を続けていくことです。
自分もブランドストーリーの中の一員だと思えるようになりますと、社内外を問わず、全方向的な繋がりを築くための強い動機付けになるからです。
ブランドストーリーを自分事化できた社員は、やらされ仕事ではなく、まさに自分のブランドとして、ブランドの発展のことを考えて自発的に行動できるようになってくれます。
したがって、社員が自分事化しやすくなるような、共感できるブランドストーリーを分かりやすくブランドブックの中に書きましょう。
そして、社内研修でストーリーテラーが社員たちにブランドストーリーを繰り返し語るようにしていきましょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第35回)では、「ブランドコミュニケーションをマネジメントする方法とは?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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