&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第22回)
「競争地位別のとるべき戦略とは?(後編➁)」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第22回目のテーマは、
「競争地位別のとるべき戦略とは?(後編➁)」です。

それでは行ってみましょう!

_4.フォロワーブランド

4-1.フォロワーとは?

「フォロワー」とは、市場シェアではリーダーとチャレンジャーに次ぐ3番手の規模であり、リーダーの真似をしながらも、リーダーにとってあまり魅力的ではない市場セグメントを狙っていくブランドのことです。

リーダーのように市場シェア1位でもなければ、チャレンジャーのようにリーダーを狙える市場シェアや経営資源を持っているわけでもない。
さらに言えば、ニッチャーのように独自の生存領域もないブランドが「フォロワー」です。
業種や業界を問わず、世の中のほとんどのブランドがフォロワーであると言えるでしょう。

4-2.フォロワー戦略が成り立つ市場環境及び戦略目標とは?

フォロワーブランドには、前述のように、リーダーが持つトップシェアならではの強みや豊かな経営資源、チャレンジャーが持つ競争上の優位さと経営資源、ニッチャーが持つ独自の生存領域によるメリットなどがありません。
つまり、独自の強い魅力をまだ持てていないために、リーダーやチャレンジャー、ニッチャーたちと正面からぶつかると勝てません。

そのため、マージン(=利幅)の薄いセグメント(=細分化された市場)といった一番条件の良くない市場で戦わざるをえません。
したがって、フォロワーブランド戦略が成り立つ市場環境とは、地方や低価格帯などのリーダーやチャレンジャーにはあまり魅力的ではない環境になります。

つまり、ブランドバリューも製品機能の多様さも気にしないタイプの顧客が集まる市場で、他方で、価格には敏感に反応する顧客が多いことから「経済性セグメント」と呼ばれている市場環境です。
低価格競争に最も巻き込まれやすい不利な市場環境であることから、フォロワーブランドの戦略目標はとりあえず存続し続けていくことです。

しぶとく生き残り、フォロワーの地位を脱却することを目標とします。
無駄な投資を極力排除して、コストダウンを図り、薄い利幅の中でもしたたかに利益を確保します。
そして、少しずつでも貯蓄してきた利益(知識、経験などの経営資源も含む)を蓄積し、フォロワーブランドからの脱却を図るための成長を目標にします。

イメージとしては、知恵と工夫によってしたたかに利益を確保しながら、しぶとく生き残り、少しずつため込んできた利益を再投資に回すことによって、フォロワーの地位から脱出して羽ばたいていくような感じです。
さらに、ブランディングによって他者と差別化された独自性ある価値を鮮明化することで、固有のファンをつかみ、ニッチャーブランドへの変身を図ることを目標にしたいです。

このように見てきますと、フォロワーブランドは、他の競争地位にあるブランドたちと比べて、最もブランディングによって独自の価値の深掘り、鮮明化が必要とされているポジションだといえます。
不毛な低価格競争から脱出するには、ブランディングによって差別化された独自性ある価値を見つけ出し、それをターゲット顧客に広く受け入れてもらえるように差別化していく必要があるからです。

4-3.フォロワーが採用するべき基本戦略

それでは、フォロワーが採用するべき基本戦略はどのようなものが良いでしょうか?
これまでの説明では、フォロワーには良いところが一つもないように思えて、絶望感がありますよね。

しかし、まだ諦める必要はありません。
確かに、強みは多くはないものの、しぶとく生き残る手段はあります。

まず、フォロワーは、組織として小規模であることが多いため、固定費が少なくて済みます。
その分、売上げ規模も少なくて済むため、高い価格設定をする必要がありません。

また、組織として小規模ということは、意思決定も速く行われやすく、かつ、臨機応変に小回りが利きやすいことも強みになります。
そのため、ターゲット顧客のニーズの変化をいち早く掴み取り、それをもとに新商品を開発して展開するといった機動的な行動が取りやすい強みがあります。

さらに、完全に独自開発をしなくても、リーダーやチャレンジャーが多額の研究開発費をかけて開発した商品を模倣すれば良いとも考えられます。
もちろん、不正競争防止法等の法律に違反するようなことはやってはいけませんが、正当な範囲内の模倣であれば研究開発コストをかなり削減することができます。

そして、リーダーやチャレンジャーが多額のプロモーション費用をかけて商品を顧客に認知させ、物の販売であれば店頭まで連れてきてくれるわけですから、それにタダ乗りさせてもらえば良いとも考えられます。

つまり、フォロワーはそのメリットを活かせれば、かなり原価を下げることができるのです。

このように、リーダーやチャレンジャーにはないメリットがフォロワーにはあります。
したがって、フォロワーは、そのメリットをフルに活用して徹底的なコスト・ダウンを図り、意識的にリーダーやチャレンジャーが提供している商品よりも低価格な代替品を供給していくことを基本戦略にするべきです。

そこで、マーケティング4Pはそれぞれ以下のような方針で戦略を組み立てていきます。

➀商品(Product)

フォロワーは経営資源が乏しいため、商品の品揃えとしてフルカバレッジや、深い商品ラインを揃えることはできません。
そのため、比較的狭く、しかも、奥行きが浅い商品ラインになります。
そして、品質はそのままで、それ以外の余分な部分を徹底的にカットすることで、トップブランドのワンランク落ちの仕上がりにします。

その商品が最低限備えていると一般的に思われている品質は維持しなければ、顧客はいくら安くても買ってはくれません。
そこで、無くても顧客が困らないもの、顧客が求めていないものに関しては、それは余計な部分になりますので徹底的にカットしていきます。

例えば、デザインやカラーバリエーションなどをカットすることで、その分値段を下げるといった工夫をしていきます。
分かりやすい例が、低価格で旅客を運行することで航空業界に革命的な変化をもたらしたLCC(Low Cost Career)タイプの航空会社です。

従来ですと、国内線の便であっても、1時間半を超える遠距離フライトの場合には、飲み物や軽食が機内食としてサービスされるのが普通でした。
乗務員の制服も凝ったデザインのもので華やかな印象を与えるものでした。

しかし、LCCは徹底的に無駄を省いて、コスト削減を図り、低価格で顧客を集める作戦に成功しました。
機内食を省き、飲み物の提供も省き、乗組員の高価な制服も省いて、カジュアルで動きやすい制服を徹底させました。

そして、飛行場の使用料を軽減するために、滞在時間を短くするようなオペレーションを組む、などといったその他諸々のコストカット努力を行います。
これにより、それほどフライトの快適さにこだわらず、自分にとって必要ない余分なサービスをカットしてくれるなら、安い方が良いという顧客層を着実につかんだのです。

②価格(Price)

当然ながら価格を低く設定することで、リーダーやチャレンジャーとは価格の面で差別化を図り、顧客を誘い込みます。
この低価格路線を可能にするために、徹底的なコスト・ダウン努力が必要になるわけです。

③流通経路(Place)

流通経路は、低価格志向の顧客が集まりやすい流通チャネルに集中させます。
つまり、ディスカウントショップやオンラインストアなどの流通経路を利用して、低価格志向の顧客が買いやすいような道筋をつけるようにします。

④広告宣伝及び販売促進 (Promotion)

広告宣伝及び販売促進は、極力抑えるようにします。
これは前述のように、リーダーやチャレンジャーが多額の投資をしてプロモーション活動を行った恩恵を受けることができるからです。
したがって、プロモーションは他社の中に埋もれないように認知を獲得することを主眼にするだけでも良いと思います。

フォロワーブランドも知恵と工夫次第で、その市場の中の競争地位から脱却していくことは可能です。
まずは、ブランディングによって差別化要素を鮮明化し、ニッチャーブランドへ転身することを狙って頑張っていきましょう。

以上が、フォロワーブランドが採用すると良い基本戦略です。
ここまでの説明を参考にして、自社ブランドにふさわしい戦略を考えてみてください。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第23回)では、「ブルーオーシャンを狙った差別化戦略とその目指す先とは?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
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私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

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クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
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5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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